7days Later
1週間後
『・・・ここで事故の続報です。
先日起きた、連邦女子士官予備学校で起きた爆発事故。その現場では
依然として捜索活動が続いています。しかし生存者はいまだ発見されておりません。
付近では連邦政府による戒厳令が・・・・』
『・・・爆発事故から10日。以前現地は厳戒態勢が続いております。
昨夜、ようやくエレーフ(連邦政府)からの公式発表がありました』
『連邦女子士官予備学校“ディーナ・シー”における
人的被害の総数は学校職員52名全員。
そして生徒256人の内254名の遺体を確認』
『生存者は生徒1名』
『行方不明者は、同じく生徒1名・・・』
『・・本日、エレーフ(連邦)最高主席であり、
連邦女子士官予備学校“ディーナ・シー”の名誉理事を兼務していた
エレン・ラファティ女史は、引責による辞任を表明し・・・』
3years Later
3年後
7つのゲートをくぐり。目的の場所へ。
私が今日から着任する部署だ。
部署・・・というと、語弊があるかもしれない。
正確には部署ではない。
此処の中枢。
現世界の、最高府ΡΦ(エレーフ)中央対策委員会
“The CETRAL”。
その事実上の意思決定機関。
“第十二分室”
残り11分室と、上層部7セクションは
此処の検証機関に過ぎ無い。
そして此処を隠す為に存在すると言っても過言ではない。
闇の中枢。
通称“イスカリオテ”。
滅びつつあるこの世界は、今息を潜めて
彼らの言葉を待っている。
セブンマスター(7人の先生)の言葉を。
・・・といっても今では6人だけど。
扉の前に立ち、深呼吸。
カードをスロットに掛ける。
プシュッ。
圧縮空気の抜ける音。
扉が開く。
「失礼します!」
薄明かりに照らされた扉の向こうでは・・・
『あ!』
二人の男がカップ麺を取り合っていた。
第一印象は、最悪って事?

「いやね。最後の一個だったんで、つい年甲斐もなく・・・
ほら!コウ!お前もなんか言えっ!このッ!」
「うっせぇこのヴォケ!“塩”はかなりレアなんだぞ。
それをオメェは・・・」
無償髭の男が蹴りを一閃。
眼鏡男が壁際に沈む。
あれは、確か・・・そう、ヤクザキックだ。
世界の・・・・中枢?
・・・はは。
「まぁ見なかった事にしてくれ。
君は確か・・・橘さんだったよな。
俺はミゾロギってんだ」
ミゾロギ・・・溝呂木カネツグ博士。
脳幹MRI“ダヌ”の開発者にして
世界有数の“ブレイン・ダイバー”。
十二分室のNo.2。
知識でしか知り得なかった人が
今、目の前に立っている。
「あ!?」
「を?」
「りゃぁーーーッ!!」
今までノビていた筈の眼鏡男がいきなり復活。
ミゾロギさんの首に綺麗なラリアート。
「コウ・・・て・・めぇ・・・」
ミゾロギ博士、ダウン。
眼鏡男、ウィナー。
決まり手、不意打ち。
「はぁ・・はぁ・・・。やぁ、お嬢さん。
朽木と言います。特技は狸寝入り」
分室のNo.1。
伝説の“プロフェッサー”。
朽木コウ先生は・・・・。
鼻血を垂らしていた。
「えーっと、ところで君は・・・」
多分ミゾロギさんの話を聞いていなかったのだろう。
伝説の壊れ眼鏡鼻血息切男・・・もとい“プロフェッサー”が
やや呆けた感じで声をかける。
私は我に戻り、襟を直し敬礼した。
「始めまして朽木先生。本日を以って
この十二分室に着任致しました
橘 里美 一等准尉です」
ああ、君が“マティア”か。
朽木先生は静かに呟いた。

「確か・・・君は?」
「・・・ええ。生残りです
ディーナ・シー(Daoine Sidhe)の」
「聞かれるのは、苦痛かい?」
「いえ・・・苦痛もなにも
私には当時の“記憶”が無いんです」
その時まで、あなたの“闇”預かっておくね。
「アムネジア・・・か」
「ええ。それもかなり特殊らしいです。
学園で積んだ授業キャリアは身についているのに
それ以外の事が全て抜けて。きれいさっぱり。
事故の後遺症というには・・・あまりにもですけど」
「P4実習研究練の爆発・・・だったかな?原因は」
「そうらしいですね。覚えていませんが」
「全く?」
「ええ・・・友人の顔でさえも。悲しいですが」
「なるほどねぇ」
「・・・なんですか?」
「いや、こっちの事」
「なんですか!?」
「多分・・・“奴ら”が何かやったんだろう」
「奴ら・・・それって何ですか!」
「・・・・ないしょ」
「・・・・殴りますよ」
「いきなりですかい」
「いきなりです」
「痛いのはやだなぁ」
「教えて下さい!!何か知っておられるのなら・・・」
「・・・・橘一尉」
「はい」
「これはまだ俺の空想の範疇でしかない。
だから君には話せない」
「・・・申し訳御座いません」
「それにね」
「はい」
「もしそれが事実なら、俺と君はこの世の“禁忌”に触れる事になる」
「・・・構いません」
「そうかい・・・なら今度ゆっくりとな」
「・・・・・」
「まぁ、そんな怖い顔すんなよ。
さぁ着いた。ココだ」
エレベータを下り長い廊下の果てに
その扉はあった。
巨大な扉。
この世の果て。
「いいのか?」
「はい?」
「いまならまだ引き返せる」
「いいえ」
「この先は、地獄だぜ」
地獄なら、もう見ました。
・・・?
何故?なんでこんな事を思うのだろう。
私は心の中で言葉を変えた。
「今ここに居る私は、多分沢山の友人の“想い”を背負っています。
覚えてないですが、そう感じるんです。背中を押すんです。
だから私は・・・引き返せません。行きます、前へ」
「酷い友情だな。地獄へ背中を押すなんて」
「何と言われようが構いません」
「そうかい」
指紋照合、グリーン。
網膜照合、グリーン。
声紋確認、グリーン。
DNAスキャン、グリーン。
コウ・クチキ。
サトミ・タチバナ。
ケルベロスチェック
オールグリーン。
ノッキンオン・ヘルズドア。
オープン・ザ・ゲート。
大きな鉄の扉が、ゆっくりと開く。
「ようこそ、イスカリオテへ。
この世の果てへ。
地獄へようこそ・・・里美ちゃん」
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扉の向こうから放たれる光に包まれながら 私は全く別の事を考えていた。
あの時大切なものを失ったのかも知れない。 あの時大切なものを得たのかも知れない。
わたしはここにいる。 たしかにここにいる。 本当に?
彼女はブロンドをなびかせて 月夜を跳ねる。 優雅に、そして残酷に。 青い瞳に映るのは血の色。 鏖(みなごろし)の雄叫びをあげ 戦いの犬を、野に放て。 シェークスピアだったかしら。 でもあれは猫だ。 綺麗で優雅で、とびきり残酷な猫。 今日も彼女は、背中の翼を光らせて この世界のどこかで 振りまいているのかも知れない。 無慈悲で安らかな死を。 あなたはだあれ? 「わたしはあなた。あなたはわたし」 そうでしょ?サトミ。 そんな声が響いた。 |
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